【日本産新鉱物】 阿武隈石 Britholite-(Y)

阿武隈石 (イットリウムブリト石) Britholite-(Y) Bri-Y 

(Y,Ca)5(SiO4)3(OH);六方晶系 (燐灰石スーパーグループ > ブリト石グループ) 

IMAステータス:"Renamed" (IMAが設立された1958年以降に鉱物名が変更された有効な種) 

鉱物名:Hata (1938) によって新鉱物・abukumalite (阿武隈石) として記載されたが,ブリト石グループのイットリウム卓越種であることが判明したため,再命名された (レビンソン則)."Abukumalite" の名称は抹消されたが,和名には規約がないため,阿武隈石を用いている. 

模式地:福島県伊達郡川俣町 水晶山 

模式標本:

原記載:畑 晋 (理化学研究所) 

  • Hata, S. (1938) Abukumalite, a new mineral from pegmatites of Isaka, Fukushima prefecture. Scientific papers of the Institute of Physical and Chemical Research, 34, 1018-1023 (IMA第一文献). 

福島県伊達郡川俣町 水晶山;模式地 (Suishoyama, Kawamata, Fukushima Prefecture; Type locality).FOV ~16 mm.

 濃赤褐色塊状の断面.


滋賀県大津市 比良正面谷 (Hira-Shomendani, Otsu, Shiga Prefecture).FOV ~12 mm.

 石英,カリ長石に伴って濃赤褐色の塊状をなす.淡褐色の分解物を伴う.

 面構えは水晶山産と似ている.


文献

  1. 大森啓一,長谷川修三 (1953) 福島縣伊達郡飯坂村水晶山ペグマタイト産イツトリア石と阿武隈石.岩石鉱物鉱床学会誌,37,21-29.https://doi.org/10.2465/ganko1941.37.21
  2. 櫻井欽一 (1957) 福島県水晶山産アブクマ石.鉱物学雑誌,3,332-335.https://doi.org/10.2465/gkk1952.3.332
  3. 桜井欽一,加藤 昭,田村政機 (1962) 滋賀県比良谷産アブクマ石.鉱物学雑誌,5,331-334.https://doi.org/10.2465/gkk1952.5.331
  4. Noe, D.C., Hughes, J.M., Mariano, A.N., Drexler, J.W. & Kato, A. (1993) The crystal structure of monoclinic britholite-(Ce) and britholite-(Y). Zeitschrift für Kristallographie, 206, 233-246 (IMA第二文献).
  5. Pasero, M., Kampf, A.R., Ferraris, C., Pekov, I.V., Rakovan, J. & White, T.J. (2010) Nomenclature of the apatite supergroup minerals. European Journal of Mineralogy22, 163-179.

Rare minerals Research, Kyoto

大西政之 (おおにしまさゆき) 大阪府生まれ,京都市在住,金属メーカー勤務. 鉱物を集めたり,調べたりしています. 興味のある分野は鉱物科学 (とくに記載鉱物学) で,希産鉱物の物理的化学的性質・生成条件などの解明を目指しています. 古典的な鉱物標本にも関心があります.