アルオード石 Alluaudite

アルオード石 Alluaudite 

□NaMnFe3+2(PO4)3;単斜晶系 

模式地: 

模式標本: 

鉱物名: 

原記載: 



茨城県かすみがうら市雪入 (Yukiiri, Kasumigaura, Ibaraki Prefecture).FOV ~3.3 mm.

 いわゆるリン酸塩ペグマタイトから産するもの.トリフィル石中に橄欖石に似た灰緑色の粒をなしている.淡青色部分は藍鉄鉱.

 雪入はアルオード石の日本唯一の産地であるが,松原・加藤 (1980) には "Alluaudite系鉱物" として記載されており,詳細な定量分析は行われなかったようである.しかし,松原 (2013) は日本における “ALLUAUDITE” の産地として松原・加藤 (1980) を引用し雪入を挙げているので,ここではアルオード石とした.近年,アルオード石スーパーグループの命名規約が公表され,それによると,一般式A(2)’A(1)M(1)M(2)2(TO4)3において各席の卓越する元素がそれぞれA(2)' = □ (空席),A(1) = Na,M(1) = Mn,M(2) = Fe3+Fe3+,T = Pのものがアルオード石と定義されている (Hatert, 2019).したがって,種の同定には厳密な分析が必要である.

  アルオード石の鉱物名はフランスの窯業家・鉱物学者F. アルオード二世 (1778-1866) にちなむ.アルオード二世は含水リン酸マンガンのウロー石 (ウーロー石,ウレオー石とも),リン酸鉄のヘテロス石 (heterosite,日本未産) の原記載者でもあり,マンガンと鉄を含むリン酸塩である本鉱物への献名は実にふさわしい.なお,ウロー石は雪入からも発見されている (松原・加藤,1996).



文献

  1. 松原 聰・加藤 昭 (1980) 茨城県雪入産ペグマタイト燐酸塩鉱物.鉱物学雜誌,14,269-286.https://doi.org/10.2465/gkk1952.14.269
  2. 松原 聰・加藤 昭 (1996) 茨城県雪入の燐酸塩ペグマタイト産ウロー石とスチュアート石 (予報).地学研究,44,219-221.
  3. 松原 聰 (2013) 日本鉱物種 第6版.鉱物情報,東京,pp. 126.
  4. Hatert, F. (2019) A new nomenclature scheme for the alluaudite supergroup. European Journal of Mineralogy, 31, 807-822. https://doi.org/10.1127/ejm/2019/0031-2874


Rare Mineral Research

大西政之 (おおにしまさゆき) 大阪府生まれ,京都市在住,金属メーカー勤務. 鉱物を集めたり,調べたりしています. 興味のある分野は鉱物科学 (とくに記載鉱物学) で,希産鉱物の物理的化学的性質・生成条件などの解明を目指しています. 古典的な鉱物標本にも関心があります.